ディベートが単なる口げんかや口論にならないためには、以下4つの特徴(テーマ、立場、ルール、勝敗)を理解して、適切にディベートの試合を運営することが必要です。

本記事では、そんなディベートの4つの特徴について一緒に考えていきましょう。

ディベートとは、特定のテーマについて異なる立場に分かれて議論を戦わせる、討論をゲーム化したものです。

事前にテーマが与えられ、自分の意見にかかわらず、肯定側と否定側に分かれ、相手やジャッジと呼ばれる第三者を説得するために理論的な議論を展開します。

学校教育や従業員研修などで取り入れられている形式は「競技ディベート」として知られ、論理をベースにお互いの説得力を競い、第三者に勝敗を委ねるかたちで進めていきます。

この記事では、はじめての方に向けてディベートがどんなものかを解説していきます。

ディベートの特徴4つ

これから解説する4つの特徴に従って、ディベートを進めることによって、皆さんが想像しているような口げんかや口論にはなりづらくなります。また、ディベートの試合を滞りなく進める方法であると同時に、参加者の「聴く」「考える」「まとめる」「伝える」の4つのスキルを高めてくれる機会を提供してくれます。

その1:テーマ

ディベートには必ず意見対立を前提にしたテーマが用意されています。


「日本政府は学校の教科書をタブレットにすべきである」
「●●社は英語を公用語にすべきである」

例えば「日本政府は学校の教科書をタブレットにすべきである」というテーマが与えられた場合、賛成側(教科書をタブレットにするべき)と反対側(教科書をタブレットにするべきではない)のグループに分かれて討論を行います。

また、ディベートのテーマでは、大半が主人公がいて、その主人公の立場で、特定の行動(政策、施策、ルール)の実行の是非(望ましいか、望ましくないか)について議論をします。誰の立場で何をするかが明確に決まっているため、直接口論や討論にはなりえないのです。

ポイント:聴く力
ディベートと聞くとガンガンと話す印象を持っている人が多いと思いますが、実は「聴く力」「理解する力」のほうが求められます。
例えば、死刑が良いか悪いかではなく、日本政府にとって死刑という制度が望ましいか、どうかを理解して、相手の話を聴く必要があります。
物事の前提条件を理解する、相手の議論を「聴く」の2つができる方は話が上手な人よりもディベートのセンスがあると言えます。

その2:立場

ディベートにおいて、肯定側/否定側の立場が試合直前まで決めず、ジャンケンやコイントスで肯定側になるか、否定側になるかを決めていきます。

原則、自分の主義主張は反映されないと考えてください。

例えば、あなたが死刑反対であっても、賛成側になれば死刑賛成の議論を作り、最後まで賛成派として試合に臨むことになります。

ディベートの試合では、どちらの立場でも議論できる状態を作ることが求められます。一つの意見に固執せず、異なる視点から物事を検証していきます。

両方の立場になって物事を考察できるようになるから、特定の主義主張に思考が偏らず、客観的な立場で物事を理解して、考えて、適切な判断を下せるようになります。

ポイント:考える力
議論が弱い人は「絶対論者」が多いです。絶対論者は、自分の主義主張にこだわるあまり、議論全体に対しての視野が狭くなりがちです。この場合、自分と同じ考えの人達を説得できても、自分とは違う考えの人達を説得できなくなります。ディベートにおける「考える力」とは、どの立場になっても、キチンとした主張を組み立てることができる柔軟かつ構造化された思考力を意味します。

その3:タイムテーブル

ディベートには、話す時間順番役割などが事前に細かく決められたタイムテーブルがあります。団体によって異なりますが、べしゃり塾/即興ディベートワークショップでは、以下のタイムテーブルで試合を信仰しています。

ディベートの流れ

1)立論スピーチ

議論のたたき台を出すスピーチ

今回のテーマについて、肯定側/否定側共に自分たちの立場に従った議論を作り、発表する。今回のテーマ(論題)が採用されるべきか(べきでないか)について自分たちの理由付けを示す。

2)質疑・応答

主に立論の内容を確認する。原則、このパートでは議論をしない。質問側は、反論をしない。あくまで確認、確認、確認...。
応答側は立論の内容に素直に答える。私が本当に言いたかったこと!的な説明はしない。

3)反駁スピーチ

お互いの立論の内容をもとに議論の攻防戦を通して、ジャッジ・聴衆に対して自分たちの立論のほうが相手の立論よりも優れていることを伝える。反駁では、新しい議論は出せない。あくまで立論をベースに展開する

通常、ディベートの試合は、事前に決められたタイムテーブル・ルールのもとで進めていくため、テレビ討論のように口ケンカにはなりません。選手がスピーチをしている間は、ヤジ・批判、アドバイスを含めてスピーチを妨げる行為は原則禁止です。

また、選手は時間内に自信が担った役割を全うしなければなりません。

ポイント:まとめる力
実際にディベートの試合をしてみると、ディベートは相手と戦うよりも時間と戦っている感覚に陥るでしょう。限られた持ち時間の中で、優先順位をたてて、自分たちの議論を展開していく必要があります。よくある討論番組で、人の話をさえぎってまで、ずっと自分の話をしている人は、ディベートには向きません。ディベーターは時間管理が凄く上手です。また、議論のマナーも守ります。

その4:試合の勝敗

ディベートの試合では、最終的に第三者であるジャッジや観客から票を獲得することで勝敗を決めます。試合の勝敗を決めるのは選手以外の第三者です。

たとえ、相手を完全に論破できたと思っても、ジャッジ・観客から票を獲得できなければ負けになります。逆にコテンパンに論破されても、ジャッジ・観客から票をもらえれば試合では勝てます。

よって、選手は強制的にジャッジ・観客に向かって、自分たちのスピーチが伝わっているかどうかを確かめながら行っていく必要があります。

この点に関しては、論破力の本を執筆した西村博之さんのこの一言が参考になります。

テレビやネットの討論番組には、必ずそれを見ている人がいて「誰が勝ったか、負けたか」を常に判断しています。じつはビジネスシーンでも同じで、議論の場にはそれを見てジャッジする人がいるわけです。つまり、大事なことは目の前の相手と討論することよりも「見ている人に自分をどうプレゼンするか」だと思うのですよ。
 要は、そういうジャッジをする人たちがどういう基準で判断するのか、その人たちに何を見せるのかということを考えて、何個かある「勝ちパターン」の中から順番に試して、議論というゲームで勝とうとするわけです。
 裏返して言うと、「ジャッジがいない状況では議論しない」が鉄則ということです。

論破力:ひろゆき

自分の議論や意見が正しいかどうかではなく、相手が何を考えているか?その考えに基づいて適切に言葉を投げているか?を常に確かめながら議論を進めていく必要があります。

ポイント:伝える力
ディベートの試合では、常に聞き手の反応を伺いながら、スピーチをしていく必要があります。ジャッジ・観客は、自分のスピーチ内容を理解しているのか?キチンとメモを取っているのか?を確かめながら、微妙に言葉を上手に操る必要があります。一貫した軸を持ちながら、柔軟に対応していく必要があるのです。

ディベートの教育効果

これらの教育効果を通じて、ディベートは単なる言葉のゲームを超え、実社会で必要なスキルを育成する強力なツールとなります。